固定費削減~保険編「病気・ケガ」の公的サポートを把握して、加入保険を見直そう
日本は「国民皆保険」であるため病気・ケガの治療費を支払った場合、自己負担額は原則3割となります。そして、重要なことは自己負担額には「上限」があるということです。また会社の健康保険によっては付加給付制度により上限が2万5千円になることもあるので、会社の方にも確認してみましょう。
- 1 高額療養費制度とは
- 2 自己負担限度額(70歳未満)
- 3 自己負担額は世帯で合算できる
- 4 高額な医療費が継続するときは「多数回該当」で負担が軽くなる
- 5 高額療養費制度の申請方法
- 6 「限度額適用認定証」の活用で支払い額を上限額までに抑えられる
- 7 入院費シミュレーション~結局いくら医療費がかかるのか
- 8 傷病手当金(会社員の方)
- 9 参考例
- まとめ
1 高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(1日から月末まで)で自己負担限度額分を超えた場合に、その超えた金額があとから戻ってくる制度のことです(入院時の食事代や差額ベット代等は含みません)。
2 自己負担限度額(70歳未満)
所得区分 ひと月の上限額
①標準報酬月額83万円以上 252,600円+(医療費-842,000)×1%
②標準報酬月額53万~79万円 167,400円+(医療費-558,000)×1%
③標準報酬月額28万~50万円 80,100円+(医療費-267,000)×1%
④標準報酬月額26万円以下 57,600円
⑤住民税非課税者 35,400円
※標準報酬月額 4月~6月分の給与の平均額
例 標準報酬月額が30万円(年収600万円)で医療費100万円掛かった場合
80100円+(1000000円-267000円)×1%=上限額87430円
となり、窓口での負担額は30万円となり、後日
30万円から87430円を引いた約21万円が戻ってきます。
3 自己負担額は世帯で合算できる
それぞれの一部負担が高額療養費の自己負担限度額まで届かなくても、合算して申請することで高額療養費の支給を受けられます。
この場合の世帯とは、住民票上の世帯ではなく、同じ医療保険に加入している家族となります。
例 ①父.祖母が国民健康保険
②母.子が協会けんぽ
③祖父が後期高齢者医療
がそれぞれ合算できる世帯となります。
注意点として、
受診者ごと・医療機関ごとに自己負担額を算出し、21,000円を超えた分についてのみ合算できます。
同じ医療機関であっても、医科入院、医科外来にわけて計算します。
(例 A病院で入院60000円、A病院で外来45000円は上記計算式により自己負担限度額が80930円となります。入院費60000円+外来45000円-80930円=24070円が後日戻ってくる金額です。)
院外処方の場合、薬局で支払った自己負担額を処方せんを交付した医療機関に含めて計算します。
4 高額な医療費が継続するときは「多数回該当」で負担が軽くなる
病気などで長期の療養が必要となり、高額な医療費を継続して払わなければならない場合などがあります。いくら高額療養費が支給されても、毎月その金額を負担するのは大変です。その金額を軽減するために
・診療を受けた月以前の1年間に、3ヶ月以上の高額療養費の支給を受けた場合には、4ヶ月目から自己負担限度額がさらに軽減される。
という制度があります。
5 高額療養費制度の申請方法
ご自身が加入している健康保険組合に、高額療養費の支給申請書を提出すれば支給が受けられます。
高額療養費の支給まで最低でも3ヶ月ほどはかかりますので、気長に待ちましょう。
6 「限度額適用認定証」の活用で支払い額を上限額までに抑えられる
あらかじめ高額な医療費がかかることが分かっている場合は、事前に「限度額適用認定証」を申請しておき、窓口に提出することで実際の支払いを安く済ませることができます。
上記の例ですと87430円で済ますことができます。
7 入院費シミュレーション~結局いくら医療費がかかるのか
① 男性 30歳 佐藤さん(会社員)の場合
胃潰瘍で入院して手術を受けることになりました。入院日数は7日間(同月内)にかかった医療費は50万円でした。
医療費の自己負担額は(50万円)×3割=15万円
ここで高額医療費制度を利用すると
80100円+(50万-267000円)×1%=82430円となります。
先に支払っておいた15万円-82430円=67570円が健康保険から払い戻されます。
その他の出費として、入院時の食事代260円×20食=5200円
実際に支払った額は、
82430円+5200円=87430円となります。
② 女性 30歳 鈴木さん(専業主婦)の場合
定期健康診断で乳がんが発見され、入院後手術をすることになりました。
本人希望で個室になり、60日間入院しました。
かかった医療費は150万円(入院月は100万円+翌月50万円)でした。
医療費の自己負担額は150万円×3割=45万円
ここで高額医療費制度を利用すると
入院月分
80100円+(100万円-267000円)×1%=87430円
翌月分
80100円+(50万円-267000円)×1%=82430円
合計 169,860円
その他の出費として、
入院時の食事代260円×180食=46800円
差額ベッド代が1日あたり6000円だったため
6000円×60日=36万円
実際に支払った額は
169860円+46800円+36万円=586660円
8 傷病手当金(会社員の方)
病気やケガで働くことができない期間(4日目以降)1日につき日給の3分の2が支給される。期限は支給された日から通算して1年6ヶ月間まで。休業中に給与の支払いがない等の条件があります。
9 参考例
(1) 月5000円を10年間支払った場合の合計額60万円
① 病気にならなかったら、60万円は掛け捨て。
② 病気になったら、1日支給額が5000円なら、上記例で60日入院した
場合5000円×60日=30万円の支給。
(2) 月5000円を10年間貯金した場合
① 病気にならなかったら、丸々60万円残る!
② 病気になったら、上記例だと
60万円-586660円=13340円残る。
個室でなければ(差額ベッド代をなくせば)36万円分が浮くので、
合計373340円が残る。
まとめ
① 高額療養制度により一月の自己負担額には上限がある
② 同一の健康保険なら世帯合算ができる
③ 継続して高額療養費が支給される場合は、多数回該当により更に上限が減る
④ 会社に付加給付制度があるかの確認
⑤ 高額医療費がかかるとわかっている場合は限度額適用認定証の申請
を確認することで、自分に合った保険を見つけましょう。
保険ではなく、貯金で対応するのもひとつの手ですが、家系の病歴などを考慮しつつ、ある程度の貯金が貯まるまでは、最低限の保険に入っておくと安心かと思います。