親を扶養に入れることでの節税効果!対象範囲と節税額について。

親を扶養に入れることで、所得税・住民税を抑えることができる。また、社会保険上の扶養に入れると、親自身が健康保険料を支払わなくて済むようになる。

 

この記事では、実際にいくらお得になるのか、メリット・デメリットは何かについて記載していきたいと思います。

 

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1 親を扶養に入れるメリット

 

子供には節税効果を発揮できメリットがあり、親には保険料の負担を抑えられるメリットがあります。

 

節税控除額について、親の年齢別の所得税、住民税の控除額は以下のようになる。両親を2人とも扶養にいれる場合は控除額も2倍になるため、節税効果は更に高くなります。

 

扶養親族 所得税控除額 住民税控除額
70歳未満 38万円 33万円
70歳以上(別居) 48万円 38万円
70歳以上(同居) 58万円 45万円

 

例 課税所得が300万円の場合(年収から各種控除額を引いた額)

税額=300万円×10%-控除額(97500円)=202500円

 

70歳未満の親1人を扶養しており課税所得が300万円の場合

税額=(300万円-38万円)×10%-控除額(97500円)=164500円

 

親を一人扶養しているかで、年額38000円の差がでることになります。

2人なら76000円ですので、10年で約80万円近く節税できることになります。

 

 

この場合の「同居」とは、子どもと普段一緒に暮らしている状態をいう。病気治療などにより長期入院を余儀なくされている場合でも、同居として扱うことが可能である。ただし、老人ホームなどの施設で暮らしている場合は、別居として扱われる。


保険料に関しては、子どもが加入している社会保険の被扶養者になることで、親は保険料負担を免除される恩恵を受けられる。親を扶養に入れることで、子どもの保険料が増えることもない。


ただし、75歳以上になると後期高齢者医療制度が優先されるため、健康保険制度の対象から外れることになり、子どもが加入する社会保険の扶養家族にはできなくなる。


●デメリット
親が子どもの扶養家族になると、高額療養費制度において子どもの所得が負担上限額を算出する基準となるため、親の自己負担限度額が高くなるケースがある。


親が持病を抱えていたり、医療費が高額になる治療を控えていたりする場合は、扶養に入れないほうが金銭面での負担を軽くできる可能性があることを覚えておこう。


同様の理由で、親の介護費用の負担が増すケースもある。一般的に、介護費用は、所得が低いほど負担が軽くなる仕組みとなっている。


親が別世帯であれば、親の収入だけが考慮されて介護費用の負担を軽減できるケースが少なくない。しかし、子どもと同じ世帯にすることで世帯収入が高くなると、負担軽減措置を適用できなくなる可能性がある。

 

例 低所得者(非課税者等)の場合は、自己負担額の上限が15000円

  月収が28万~50万円程度の場合は、事故負担限度額が80000万円前後

 

親の健康状態を考慮し、医療費がかかる段階では、扶養し続けるかの検討が必要になってくる。

場合によっては、健康保険料の方が安く済む場合がある。

 

 

2 親を扶養に入れる手続き

 

親を税制上と健康保険の扶養に入れるためには、それぞれ手続きが必要である。基本的には配偶者の場合と同じであり、指定された書類に必要事項を記入して提出する。


●税制上の扶養に入れる手続き
給与所得のあるサラリーマンは、年末調整時に職場から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類をもらうはずである。必要事項を記入し職場へ提出すれば手続きは完了する。提出が遅れると、翌年に確定申告しなければならなくなるため注意しよう。


●健康保険の扶養に入れる手続き
所得控除の手続きと異なり、健康保険の場合は随時受け付けている。協会けんぽの扶養に入れる場合は、「被扶養者(異動)届」に必要事項を記入し、続柄や収入要件を証明できる書類を添付して会社の担当部署に提出すれば完了である。

 

3 扶養親族に該当する条件・以下の4つをすべて満たす人のことをいいます

 

1

配偶者以外の家族以外の家族(6親等内の血族または3親等内の姻族)

都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)

市町村から養護を委託された老人のいずれかであること

2 納税者を生計を一にしていること
3

年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)

であること。(給与のみの場合は給与所得が103万円以下)

4

青色申告者の事業従事者としてその年を通じて給与の支払いを受けていないこと。

また、白色申告者の事業専従者でないこと

 

 

4 減額される税金の年齢別シミュレーション

(1)年収300万円の人が別居の親を(62歳)を扶養に入れた場合

所得税が1万9400円、住民税が3万3000円安くなります。

つまり年収300万円の人が親を扶養に入れた場合、合計で5万2400円税金を削減することができます。

 

(2)年収500万円の人が同居の親(70歳)を扶養に入れた場合

所得税が8万8500円、住民税が4万5000円安くなります。

つまり年収500万円の人が親を扶養に入れた場合、合計で13万3500円税金を削減することができます。

 

 

5 注意点

(1)健康保険上の扶養は75歳未満まで

これに対し健康保険上の扶養は、親が60歳以上であれば「年収が180万円未満」が要件となります。この場合遺族年金や障害年金も収入に含みます。別居の親も扶養に入れることは可能ですが、親の年収以上の仕送りが必要となります。


お母様を扶養家族にした場合、お母様は健康保険料(税)を支払わなくてもよい、子が親の分の医療費控除を受けられる、といったメリットがあります。しかし、75歳以上になると後期高齢者医療制度として、健康保険の制度から独立した制度の対象となり、親を健康保険上の扶養家族にすることはできなくなります。

 

(2)扶養にすることで親の介護費用がアップする場合も

税法上、健康保険上はメリットが目立つ親の扶養ですが、実は、親が介護保険サービスを利用するようになると思わぬ費用アップにつながることがあります。介護保険サービスを利用したとき、一定額を超えた分を払い戻してくれる高額介護サービス費の所得区分が世帯単位となっているからです。


たとえば、お母様に老齢年金78万円と遺族年金70万円の年間収入があり、要介護2の認定を受けて在宅で介護保険上限のサービスを受けていたとします。この場合お母様の介護保険サービス利用料の自己負担額は1割です。自治体によって異なりますが、在宅介護で要介護2であれば自己負担額の上限は2万円弱です。しかし、お母様の課税される年金の収入額は78万円なので、子と別世帯であれば、お母様の介護費用の自己負担額は月1万5,000円となります。


ところが、お母様を子の扶養に入れて、住居も家計も一緒になり同世帯となった途端、所得基準が「現役並み所得者」となってしまい、お母様の1ヶ月あたりの負担額は4万4,000円にアップします。一気に月額2万9,000円もの負担が増えてしまいます。

 

まとめ

所得税と健康保険における、親を扶養に入れる場合を簡単に解説しました。所得税、健康保険のいずれも年収要件の維持が大切です。万が一、扶養から外れた場は金銭的な負担に直結するので、親の所得などについてはしっかりと確認しておきましょう。