「iDeCo(イデコ)」「住宅ローン控除」さらに「ふるさと納税」を併用してお得に節税する計算方法


 節税になるうえに、将来の備えもできるiDeCo (イデコ)ですが、住宅ローンやふるさと納税と併用すると節税効果が十分に発揮されない‥‥。いくらまでなら十分な効果が得られるのか迷っている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、住宅ローン控除の仕組みをご説明した上で、さらにiDeCoやふるさと納税を利用した場合、どのようなメリットがあるのか確認していきたいと思います。

 

 

 

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1 そもそも住宅ローン控除とは

 まずは住宅ローン控除についてご説明します。

 

ここではフルタイム共働き世帯を想定します。ご夫婦ともに、それぞれ給与収入500万円(所得控除は、基礎控除、社会保険料控除のみを想定)、住宅ローンの残高についてもそれぞれ1300万円と仮定します。

(夫婦で世帯主のみ給与収入がある場合は、配偶者控除で最大38万円など家族構成によっても計算が変わってきます。)

 

給与所得者の課税所得は次のように計算されます。

 

課税所得

= 給与収入 – 給与所得控除(みなし経費) – 所得控除(基礎控除 + 社会保険料控除)

= 500万円 – 144万円 – (48万円 + 71万円)

= 237万円

 

給与所得控除の計算式

    給与収入   給与所得控除
   55万未満    55万円
  180万円以下   収入金額×40%-10万円
  180万円超~360万円以下   収入金額×30%+8万円
  360万円超~660万円以下   収入金額×20%+44万円
  660万円超~850万円以下     収入金額×10%+110万円
   850万円超    195万円

 

基礎控除は働いていれば全ての人が受けられる控除額となります。

(2020年1月から控除額が10万円アップしました。)

 

社会保険料の概算一覧

   年収     所得税   住民税   社会保険料   手取り 
300   6   12   43  239
310   6   13   44  247
320   6   13   46  255
330   7   14   48  261
340   7   14   49  270
350   7   15   50  278
360   7   15   52  286
370   8   16   53  293
380   8   17   55  300
390   8   17   56  309
400   9   18   58  315
410   9   19   59  323
420   9   19   60  332
430  10   20   62  338
440  10   21   63  346
450  11   21   65  353
460  11   22   66  361
470  12   23   68  367
480  13   23   69  375
490  13   24   71  382
500  14   25   72  389
510  15   25   73  397
520  15   26   75  404
530  16   27   76  411
540  17   27   78  418
550  17   28   79  426
560  18   29   81  432
570  19   29   82  440
580  19   30   84  447
590  20   31   85  454
600  21   31   86  462
610  22   32   88  468
620  22   32   89  477
630  23   33   91  483
640  24   34   92  490
650  25   34   94  497
660  26   35   95  504
670  28   36   96  510
680  29   37   98  516
690  31   37   99  523
700  32   38  101  529
710  34   39  102  535
720  35   39  104  542
730  37   40  105  548
740  38   41  107  554
750  40   42  108  560
760  41   43  109  567
770  43   43  111  573
780  45   44  112  579
790  46   45  114  585
800  48   46  115  591
810  49   46  117  598
820  51   47  118  604
830  52   48  120  610
840  54   49  121  616
850  55   49  122  624
860  57   50  124  629
870  59   51  125  635
880  61   52  127  640
890  62   53  128  647
900  64   54  130  652
910  66   55  131  658
920  68   55  132  665
930  69   56  134  671
940  71   57  135  677
950  73   58  137  682
960  75   59  138  688
970  76   60  140  694
980  78   61  141  700
990  80   61  143  706
1000  82   62  144  712
1050  90   67  151  742
1100  99   71  158  772
1150  109   75  166  800
1200  119   79  173  829
1250  130   84  176  860
1300  141   89  179  891
1350  155   93  182  920
1400  171   98  185  946
1450  187  103  187  973
1500  203  108  189  1000

                     

 

所得税率は10%になりますので、 

所得税額 = 237万円(課税所得) × 10% – 9.75万円 = 13.9万円

 

所得税速見表

      課税所得 税率   控除額
     195万円 5%     0円
  195万円超~330万円以下 10%   97,500円
  330万円超~695万円以下 20%   427,500円
  695万円超~900万円以下 23%   636,000円
  900万円超~1800万以下 33%

 1,536,000円

 

つまり住宅ローン減税がなければ、13.9万円の所得税を納税することになるわけですが、住宅ローンの残高が1300万円あるために、その1%、つまり13万円は税額控除になります。

税額控除というのは、その金額相当の税金を支払う必要がなくなるということですので、

税額控除額=13.9万円 – 13万円 = 0.9万円

 

となり、実際に負担する所得税額は0.9万円になるわけです。

ここまでを図にすると、次のようになります。

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2 iDeCo を利用した場合、所得税額はどうなる?

 

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では住宅ローンを利用して住宅ローン減税のメリットを受けている方が、iDeCoに加入された場合の節税メリットはどのようになるのでしょうか。

ここでは企業年金に加入していない会社員の年間拠出限度額27.6万円を用いて先ほどと同じようにご説明していきます。

全体の流れは先ほどと同様ですので、まずは次の図をご覧頂ければと思います。

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iDeCoに加入すると掛金として拠出した全額が、小規模企業共済等掛金控除と呼ばれる所得控除として扱われることになります。

つまり、この場合の課税所得は

 

課税所得

 

= 給与収入 – 給与所得控除(みなし経費) – 所得控除(基礎控除 + 社会保険料控除 + 小規模企業共済等掛金控除)

 

= 500万円 – 144万円 – (48万円 + 71万円 + 27.6万円)

 

= 209万円

 

となり、所得税は同じく所得税率10%ですから、

 

所得税額 = 209万円 × 10% – 9.75万円 = 11.1万円

となります。

さらに住宅ローン控除で13万円が控除されるわけですから、所得税11.1万円は全額控除されることになり、所得税は0万円となります。

このままだとせっかくの13万円のうち、1.9万円分については節税に使えないので「もったいないではないか!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。

住宅ローン減税分を所得税で引ききれなかった場合、住民税からも一定条件のもと、控除できる仕組みになっています。この場合1.9万円は翌年の住民税から控除されることになりますので、住宅ローン減税分が無駄になるわけではないのです。

まとめますとiDeCo加入前は0.9万円の所得税を納税していたわけですが、iDeCo加入後は所得税が0万円に、さらに住民税も1.9万円安くなるということで合計2.8万円(正確には、掛金合計27.6万円の所得税率相当である2.76万円)が節税になるというわけです。

所得税率が20%、30%、33%、、、と高い方であれば、その節税額はさらに大きくなります。

 

結論として、住宅ローン減税期間であっても、iDeCo の併用でさらにお得に節税することができます。

iDecoの加入期間が長いほど節税効果がでますので、住宅ローン減税が終わってからはじめようかな‥‥‥と思われていた方もご自身の具体的な数字を使って確認することで効果を実感してみましょう。

 

 

 

3 さらに「ふるさと納税」を併用した場合!

 

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ふるさと納税と住宅ローン控除、iDeCo について結論を言うと、ワンストップ特例制度を利用する場合は、ほぼ影響なく併用できます。

理由は、住宅ローン控除は所得税からの税額控除で、ふるさと納税は住民税からの税額控除だからです。

(1)iDeCo (は所得控除)を併用する場合の注意点。

具体例として年収500万円の(独身者または共働きの場合のふるさと納税の控除限度額は60,000円となります。iDeCoを月々23,000円利用すると、ふるさと納税の控除限度額はおよそ54,000円となるので、iDeCoの利用でふるさと納税の限度額は7,000円程度少なくなります。

 

(2)住宅ローン控除初年度は注意が必要です

 

住宅ローン控除で確定申告するとワンストップ特例制度が利用できず、ふるさと納税は住民税だけでなく所得税からも控除が行われます。

住宅ローン控除は所得税から控除しきれない場合、住民税からの控除もありますが、それには限度額があります。(住民税から差し引くことができるローン控除の限度額は「前年分の所得税の課税総所得金額等の7%で136,500円が限度」となっています)

住宅ローンの税額控除は、ふるさと納税分の控除後に行われるので、ふるさと納税が所得税から控除される分、住宅ローン控除の所得税から控除しきれない額が増え、住民税から控除できる上限を超えてしまい住宅ローン控除を満額は受けられなくなる可能性が出てきます。

つまり、ふるさと納税で60,000円を場合支払った場合

(a)確定申告すると

1 所得税の控除(還付)[60000円-2000円]×所得税10%=5800円

2 住民税からの控除(基本文)[60000円-2000円]×所得税10%=5800円

3 住民税からの控除(特例分)[60000円-2000円]×[100%-10%(基本分の税額控除)-所得税率]=46400円

 

合計58000円

・所得税(還付)は確定申告後に指定した口座に振り込まれます。

・住民税からの控除(基本文)と(特例分)は次年度の住民税から差し引かれる形になります。

 

(b)ワンストップ特例を利用すると

住民税から控除[60000円-2000円]=58000円

・住民税からの控除は次年度の住民税から差し引かれます。

 

どちらの場合も合計控除額は変わりませんが、控除される場所が違うため、住宅ローン控除初年度は、その控除を十分使いきろうとするなら、ふるさと納税の控除限度額が少なくなる可能性があることを考慮しましょう。

 

また、実際にふるさと納税で控除されたか確認するためには、「2020年中」にふるさと納税を利用した場合は、「2021年6月頃」に届く住民税決定通知書を確認しましょう。

 

まとめ

お得な制度も内容が複雑で、利用できる範囲について迷われる方も多いと思われます。今回の記事では「全ての制度を利用できる」ことを知ってもらえたらと思い作成しました。人生100年時代。早めの節税で貯蓄を増やしていきましょう。